column #1
Special cross talk / 横浪 修さん
写真人生に多大な影響を与えた
恩師、横浪 修氏と語り合う①
映えある第一回のゲストは、今城自身にとって切り離せないメンターでもあり、恩師である写真家の横浪 修氏。深夜から雪化粧に見舞われた都内の某ごはん屋さんにて、3時間にも渡るクロストークが繰り広げられました。ほろ酔い気味でちょっぴりシャイな横浪さんと、お酒は控えめながら直球ハートの今城さん。凸凹な二人のやり取りはユーモアたっぷりに独自の空間を作り上げます。写真、そして二人の今までとこれからのお話。どうぞ楽しみください。
ゲスト:横浪 修(写真家)写真:今城 純インタビュー:吉森美穂
横浪さんを対談相手に選んだ理由
今城
僕自身、18歳から写真を撮り始めて、今年がちょうど25年という節目を迎えたところです。40代になって、今後のことを色々と考えるようになりました。この機会にゆっくりとお話を伺い、相談したい人は誰か?と思った時に、横浪さんしか浮かんで来なくて。
今城さんから横浪さんへ直接オファーを。
横浪
僕、レスポンス早かったやんな?
今城
はい。すぐに快諾してもらえて嬉しかったです。
横浪
純は普段からLINEでやり取りしていても返事が早いやんな? とてもいい事やなーと思うんやけど。だから僕も今年はクイックレスポンスを心がけたいなと。既読スルーも出来るだけしないように……。分からんけど……。
今城
普段から横浪さんはお返事下さいますよ? スルーの印象ないです。
双方のLINE事情はさておきまして(笑)。
お話を戻しますが、私は今城さんから横浪さんのお話をよく聞いていて。
二人の関係から特別な温度を感じています。それが何なのかを、
今回の対談で少しでも解明できたら嬉しいです。
今城
大人の男二人が面と向かって話す機会ってないですし。
※今城、持参したカメラで横浪氏を捉える。
横浪
え?緊張するなー。
今城
写真は大きくしませんのでご安心を。まずはお酒を頼みながら。始めましょう!
横浪さんは今までにアシスタントを18人も取られている業界でも比類なき存在です。今城さんは何代目?
今城
僕は6代目でした。
横浪さん、今城さんの最初の印象は?
横浪
当時の純は、ストーカーっぽいというか(笑)。当時僕は、マネージメントに所属していたのだけれど、マネージャーから「怖いコが来たのよー!」って報告があって。
今城
あはは。お会いする前ですよね。履歴書を届けに事務所へ直撃した時です、きっと。当時はSNSとかインターネットのツールも発達していなかったから、横浪さんが所属している事務所名と、電話番号くらいしか情報がなくて。とにかく履歴書を届けるしかない!と。
当時の今城さんは、カメラマンの活動をされていましたよね?
今城
そう。事務所に所属してスナップ取材したり物撮影をしていました。既に独立していたから横浪さんと知り合いになる接点が逆に取れないんですよ。
当時はスタジオマンに所属して師匠に就く→独立するという流れが主流でしたよね。
今城
なのでいかにタイミングよく、就きたいカメラマンのアシスタント募集を獲得できるのかが重要でした。この情報ばっかりは運やタイミングがないと得られない。けれども僕はすでに独立して働いていたので、そのチャンスが掴みにくい環境で……。
不利な状態にいたけれど、横浪さんに就くことを諦めきれない。
今城
そうですね。
横浪さんの写真に魅了されていた
今城
衝撃が走ったんです。「この人はすごい!」と。横浪さんが撮影している雑誌は全て買い込み、スクラップしたり、ページを見るたびに感動をし……。
自身もカメラマンとして働きながら。
今城
このままではダメだと心の中で思いながら。
あらゆる媒体の企画で目にする横浪さんのクレジット。
今城
『シュプール』『フィガロ』『エル』『装苑』などです。あの頃は。
どんな所に刺激を受けた?
今城
当時のモード誌は、カッコいいとか、斜に構えた感じのムードが主流だった中で。横浪さんの写真だけが僕には違って映りました。モデルにでんぐり返しをさせたり、逆立ちをさせたり。背景にユーモアや独自のシニカルさが存在するんです。
写真の完成度は大前提で。
今城
もちろん! その上で世界観にガツンと来ていたんです。本当に突出していましたから。
横浪
それは言い過ぎやん。当時は自分の作品として、特に意識はしていなかったけどね。
今城
でも、どんな媒体や企画でもカラーがありました。「異彩を放つ」という表現がぴったりかも。僕が持っていた敷居が高いモード誌の概念を覆してくれたのが横浪さんの写真だったんです。
横浪
今日は語るねぇ……。
※横浪氏、少し照れている。
今宵の今城は「横浪愛」が留めどなく溢れ出ます。
覚悟を決めてください(笑)。
ついに決断。今城、行動を起こす
※ここで突如、スマートフォンで録音を始める横浪氏。
今城
どうしました!?
横浪
こんな話なかなか聞けないからな〜。老後の楽しみに取っておこうと……。
(笑)。気を取り直しまして。今城さんが横浪さん本人と出会う経緯を。
今城
今後の自分の進むべき道を真面目に考え始めた時に、今までのキャリアは手放して、アシスタントに出戻るしかないと覚悟を決めたんです。
となれば今城さんには横浪さん以外にありえない。
今城
はい。そして当時の事務所へ履歴書をと。いても立ってもいられなくて、アポも入れず事務所へ行ってしまいました。失礼なのを十分承知の上で、です。案の定、当時のマネージャーさんからこっぴどく怒られて。履歴書も突き返されてしまいましたが(笑)。
横浪
そこからの「怖いコから来たのよー!」なのか。
今城
でも、それ位のインパクトがないと僕を知ってすらもらえない、と思っていたので。この行動に後悔は全くないです。現に今こうして一緒にお酒を飲ませてもらっていますし。
※今城、満面の笑顔。
ついに横浪さんに会える!?
事務所に履歴書を届けに行くも突き返され、未だ一方通行の状態。
今城
焦りは勿論ありました。実際「別の誰かに決まりそうだ」っていう話も耳に入っていましたし。そこで、ダメ元で当時から親しくしていたロケバスの田端君に、横浪さんの暗室の場所を教えてもらいました。そこが分かれば、横浪さんのアシスタントが必ずプリント作業をしに来るじゃないですか。
田端さんは、当時横浪さんの現場によくついていたロケバスのドライバー。
普段から横浪さんをピックアップする事務所や、専任のアシスタントとも繋がっている
今城
そこで、当時横浪さんに就いていた史くん(アシスタント4代目。カメラマンの菊地 史氏)を繋いでもらって。
横浪
そうなんや。
今城
史君がその場で横浪さんの携帯へ連絡をしてくれたんです。こういう奴が今隣にいると。そこで僕はやっと横浪さんに「ロケアシに一度つかせてください!」と伝えることが出来ました。
大切なのは情熱?それとも面白さ?
横浪
最初に純が現場でついた媒体って何やったっけ?
今城
フィガロです。ロケ地は九段会館でした。
横浪
あ〜、ライティングが強かったやつか。はいはい。
今城
後日、カタログの撮影でもう一度横浪さんにロケアシで呼んでもらって。そこでも「アシスタントに就かせて欲しい」と滅茶苦茶アピールをしました。ここを逃すとチャンスがないと思っていたので。
横浪さん、当時のことは?
横浪
う〜ん……。当時アシスタント志望の子が何人かいて、ロケアシに来てもらっていたので。純が入った頃って、2000年初頭だったっけ?
今城
はい。全てプリントでやっていた時代です。
横浪
スケジュールがそれはもうパツパツに埋まっていた頃やんな。あんまり憶えてへんやんなぁ……。知らんけど。
超多忙な巨匠の現場に2回もつけただけで奇跡。
横浪
でも、僕は普段からアシスタントを志望して来る人達には「一度来てれみればいいやん」って間口を開けるスタンス。理由なく拒否とかはしないんです。こういうのって何かの縁だろうし。
改めて専属の1人を決める時は?
横浪
本題を決めるときは別。すごく慎重になる。常に一緒にいる訳だから、相性とか色々あるし。誰でもいい訳ではないですよね。やっぱり。
具体的には?
横浪
まずは僕が一緒にいて、気を使わない人がいい。あとは「なんか面白そうだな」とか。この「なんか」っていうのが感覚的だから上手く説明できないのだけれど。僕はみんなから突っ込んでもらえるアシスタントが良いと思っていて。
ある程度キャラクターが立っている方が良いと。
横浪
そう。現場で過酷な局面が起きていても、彼らがいることで緩和されることがあるんですよ。僕も普段からアシスタントをいじったりしますが、スタッフが彼らを可愛がってくれる環境が必要なんじゃないかな〜と。
現場の空気作りはもちろん、アシスタント時代から覚えてもらうって、
とても大切な気がします。
横浪
例えば面白いアダ名で呼んでもらえたり、アシスタント時代からスタッフと関係性を作っておくと、独立してからも仕事に繋がりやすい。「ブック見せて」とか「ちょっと仕事やってみない?」って気に掛けてもらえるんです。そこでやっと、彼らがスタートラインに立てる訳で。
今城 純のキャラクターとは?
横浪
純もこんなにスキニーでパーマが強くて。個性が強いやん。身体もストイックに鍛えているみたいやし。一体、何処を目指しとん?
今だに横浪さんからいじられる6代目今城さん(笑)。
今城
歴代の兄姉弟子たちもキャラが濃いですよ! 当時の僕はストレートヘアでしたし。
横浪
でも純のキャラを見据えて決めたんやろうな〜。見た目とは逆に、純は根が真面目やし。体育会系の熱さもあってギャップがあるから。あと、履歴書も情熱的やった。
どんな履歴書だったか今城さんは覚えている?
今城
確か自分の基本的な経歴と、横浪さんが撮影したもので特に好きな写真をスクラップし解説したレポート。さらに「どうしても横浪さんのアシスタントに就きたい!」という想いを便箋5枚くらいしたためた3点セットでした。情熱を通り越して重いレベルの(笑)。
横浪
いや、そんなことはないかな〜。実は、歴代のアシスタントの履歴書を全てストックしていて。たまに見返すんですよ。今読んでいても当時の想いが伝わって来るようで、いいものです。僕に一途な人っていうのは、やっぱり嬉しいものだから。
今城
僕みたいに、横浪さん一択です!っていう。
横浪
たまにアシスタント志望の面接で「他に当たっている人がいる?」って聞いた時に、「実は●●さんと、●●さんにも……」なんて打ち明けられると、淋しくなるもんなぁ。
今城
就きたい師匠への情熱は大前提ですよ。それがないと結果続けられないです。師弟制度っていうのは学校とは違いますから。
今城さんの場合、一度社会に出ていたのも大きい。
今城
お金を稼ぐことが簡単ではないことを、身をもって感じていました。趣味の延長ではないし、このままいけばダメになる。だから全てを手放してリスタートを決めた訳で。ダメ元で横浪さんに飛び込まなければ、アシスタントの座は掴めなかったはずです。
横浪
今日の彼は特に熱い。店員さん、麦焼酎のお湯割お代わり!
……次回も白熱するクロストークをお楽しみに!